虫無理

夜10時を過ぎ、しょぼしょぼした目のまま駐車場から車を発進させた私は、ふと異変に気付きました。
何か見慣れないものがフロントガラスにいる……。
霞んだ目を瞬きしながらよく見ると、それは大きな緑色の昆虫でした。バッタのように見えました。
う、気持ち悪い、こっちくるな、早く飛んで行け、と思いもう一度よく見ると、ヤツはフロントガラスの内側にいることがわかりました。
(ぎゃー)
本気で怖いときは声が出ないものです。
と、とりあえず早くどこかに、あわわあわわ……と、夜遅くまで開いているスーパーの駐車場に停めました。すばやく降りて、緊急脱出成功。
運転席と助手席のドアを開けて、車の外から傘でフロントガラスをコツコツ叩いて少しずつ移動させようとしたけど、外に出てくれません。ヤツをなるべく見ないようにして格闘していましたが、だんだん気持ち悪くなってきました。うぷ、どうしよう、このままじゃ帰れないと思い、近くに住んでいる友達に助けを求める電話をしました。
「ごめ〜ん、助けてあげたいけどいま大阪〜。」
なんてこったい、夫婦で大阪旅行中だそうで、そんななか夜10時過ぎに電話をかけた私は本当に邪魔者です。
友達と話したおかげで少し落ち着くことができたので、他にこの近くにいる人はいないか考えたところ、まだ帰ってなくて近くの駅にいた電車に乗る直前の友達を捕まえることができました。
急いで迎えに行き、合流して、車まで来てもらいました。
「大きいねー。すいっちょん?」
と友達は言ってましたが、調べてません。検索すると画像が出てきそうで無理です。
勇敢な友達は、「私も虫は苦手。」とか言いつつも、傘で内側から突付きながら移動させて、無事外に出すことに成功しました。すごいです。お礼はそこのスーパーで買ったジェラートだけでごめんなさい。
ヤツは飛んでどこかに行きました。飛ぶ姿とかを思い出すだけでもぞわぞわします。今も、緑色を見るとまだぞわぞわします。どこから入ってきたとか考えるともっとぞわぞわするので、一人で運転するときはなるべく車の窓を開けないようにするぞと心に誓いました。